つたわることば
by sato_ignis
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さびしいと いま
いったろう ひげだらけの
その土塀にぴったり
おしつけたその背の
その すぐうしろで
さびしいと いま
いったろう
そこだけが けものの
腹のようにあたたかく
手ばなしの影ばかりが
せつなくおりかさなって
いるあたりで
背なかあわせの 奇妙な
にくしみのあいだで
たしかに さびしいと
いったやつがいて
たしかに それを
聞いたやつがいるのだ
いった口と
聞いた耳とのあいだで
おもいもかけぬ
蓋がもちあがり
冗談のように あつい湯が
ふきこぼれる
あわててとびのくのは
土塀や おれの勝手だが
たしかに さびしいと
いったやつがいて
たしかに それを
聞いたやつがいる以上
あのしいの木も
とちの木も
日ぐれもみずうみも
そっくりおれのものだ
by sato_ignis
| 2008-02-26 22:30
| 詩
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