なぜどこかが違うのか、大体はいつもの通りなのに
空も同じ、また晴れている
森も同じ、空気も同じ、水も同じなのに
ただ奴だけが戦闘から戻らなかった
俺には今や分からないー俺たちのどっちが正しかったのか
よく夜を徹して論じあったものだったが
俺ははじめてやつの存在を感じている
奴が戦闘から戻らなかった今になって
調子っぱずれに黙り込んだり調子っぱずれに歌を合わせたりした奴
いつも人と違うことを喋りだす奴だった
奴は俺を眠らせてくれず、太陽と同じ早起きだった
それなのに、昨日は戦闘から戻らなかった
今は空虚になったーそんなことじゃないんだ
急に俺にはわかったんだーーー俺たちが二人だったことが
俺にとっちゃ、焚き火が風で吹き消されたようなものだ
奴が戦闘から戻らなかったことは
急に解き放たれたように、あたりは春めいてきた
間違って俺はつい声をかけてしまったよ
『おい、そのタバコ俺にも吸わせろ』、でも返事はない
だって奴、戦闘から戻らなかったんだ
俺たちの死者は、俺たちを不幸にさせない
俺たちの戦死者は、番兵のようなもの
空は森に映っている、水に映るように
そしてそびえ立つ木々は青い
塹壕は俺たちには充分広かった
時間は俺たち二人のために流れていた
それがみんな一人用になって、俺には思えるんだ
戦闘から戻らなかったのは俺じゃないかと