雪をあざむく白地の事業服 胸のマークはヨー 一の文字よ
帽子目深に月の眉かくして 笑を含んでヨー 「チルラー」とるよ
おもて離せや「フェンダー」入れるよ 面舵取舵ヨー「ジャコブ」へ
「カッター」は出て行く 「ポンド」は暮れるよ 沖の鷗とヨー 「セイリング」よ
カッターは出て行く灣口の一本松 指して行く手はヨー 宮島よ
娘さんよく聞け生徒さんの好物はよ 娑婆の便りにヨー 酒保羊羹よ
娘さんよく聞け生徒さんに惚れるなよ 沖でドンと鳴りやヨー 若後家よ
吹くや春風「ヨツト」が走るよ 上手囘しもヨー あざやかによ
吹くな春風散らすな櫻よ せめて考査のヨー 終はるまでよ
考査終はれば休暇も近いよ 水泳訓練ヨー 何のそのよ
今日も天測見上げる空によ 泣いたあの夜のヨー 星がとぶよ
巡檢用意のラッパを聞けばよ そぞろ故鄕がヨー 偲ばれるよ
巡檢過ぎれば昨日の續きよ 夢の中ではヨー 俺一人よ
巡檢終はればベットの夢路よ 笑つたあの娘のヨー 片えくぼよ
あの鼻囘れば生徒館が見えるよ 赤い煉瓦にやヨー 鬼が住むよ