上
玲瀧高き仙嶺の 千秋の雪影きよく
渺茫ひろき大瀛の 萬古の流色ふかし
あゝ正大の氣凝りて 美はしきかな秋津洲
その雄麗の影涵(ひた)し この秀麗の色うけて
烟波(ゑんば)漲る三千里 海路の果は遠くとも
浪の行へは我船の 旗翻へす地ならずや
萬里をかくる曉の 風南淸の野に荒れて
朝日輝く揚子江 江上の浪躍るとき
翻へる我商船の 日章旗など勇ましき
千里に亙る夕暮の 雲北米の山を罩め
夕日まばゆき金門に 紅蓮の色の浮ぶとき
翻へる我商船の 日章旗など麗はしき
中
釋迦を出しし海南の 印度の末路今如何に
孔孟立ちて道說きし 中華四億の民如何に
法燈うすれ聖敎の 道長(とこし)へに空しきか
アリアンの族ならづんば クリスト敎徒ならづんば
二十世紀の文明を 語る得じと誰か言ふ
見よ向上の旗あげし 秀麗の國秋津洲
立て我大和民族よ 東亞の空にそそり立つ
仙嶺の雪戴いて 建國爰(こゝ)に二千歲
今こそ立ちて我族の 使命を果す時は來ぬ
孤嶋に踞して大平の 春を唱ふるもの誰ぞ
見よ南海の浪高く 絕東方に多事の秋(とき)
我立たづんば大局の 經論誰か語り得む
幽冥の霧吹き拂ふ 風に嘯くマアキユリイ
その大旆(はい)の指す處 正義の光照りそひて
人種の差別茲に絕え 宗派の異同茲になし
渾沌の雲吹き拂ふ 風に嘯くマアキユリイ
その大旆の指す處 平和歡喜の色みちて
園に不斷の花の香や 空に無窮の月の影
下
長煙遠く棚引きて 入相の鐘暮れてゆく
隅田の流れ夕潮に オゝルを輕く浮ばせて
秋西風に嘯きし その豪快のあとかたや
あゝ一ツ橋空高き 母校の春の朝ぼらけ
銀杏の梢靑葉して 若き光の冱ゆる時
梧桐の影に語らひし その歡樂のあとかたや
瘴煙こむる南洋に 曉天の星さゆる時
寒嵐(かんらん)むせぶ西比利亞の 荒涼の月仰ぐとき
思ひを馳せて一ツ橋 母黌の姿君見ずや
狂瀾山と湧くところ 淸き理想の海原に
希望の星を涵すべく さらば我友諸共に
蛟龍(かうりやう)の意氣胸にして いざ雄飛せん五大州