綠の森の自治の丘 自治の燈(ともし)のあかくして 角笛高く口誦せば
棘の道に彷徨へる 羊の群れは從へり 若き笛子に微笑(ゑまひ)あり
若き身なるを若き日の 誇を共に歌はばや 四年(よとせ)の丘の我春は
永遠(とは)の生命の糧なるを 夢にしありと言はば言へ 歌聲つきず自治の城
四寮の窻に吹きならす 笛の高音のひとすぢに ひびく心は憧憬(あこがれ)の
自治の女神の養(みづか)ひし 高き理想の森影に 十年(ととせ)の春を迎へけり
同じ運命をこの森に 君とし我は見出しぬ 君よ朗らに歌へかし
琴彈く技は知らねども 胸の血潮を汲み交はし 自治燈(ともし)の下に醉はんかな
夜は寂寞(しじま)の森なれば 六連(むつれ)の光かすかにて
かたみに理想(おもひ)語り合ふ 若き愁ひを知るや君
たかき使命(つとめ)と希望(のぞみ)とに あゝ胸の血のたぎるなり
胸の血たぎるこの宵は 十年の記念祭宴筵(まつりうたむしろ) 盃あげてさらば君
久遠の綠變はりなく 東亞に光るこの森を 混濁の世に誇らなん
大正八年