何をしに来たのかもはっきりせずにぼくはここへやって来て
見様見真似でいつの間にか大人になった
掛値なしに好きでたまらないものももちろんあるけれど
それは風のように一刻もここにとどまっていない
電気スタンドのスイッチを直していて思ったことがある
ぼくをここに結びつけるものはこのスイッチひとつで十分だと
人間の作り出した小さな物が正常に働くこと
それがぼくにとっては何にも代えられない喜びだ
金属や木や硝子で作られた物は明瞭な輪郭をもっているが
人のうちに隠れているあの図りがたい何かにはどんな輪郭もない
だがそれは途方もない力でぼくをここに閉じこめ
同時にどこかへ追放しようとする
もみくちゃにされながらぼくは驚く
人の手で作られた小さな物が泰然としてここにあることに
それがそんなにもはっきりした目的をもっていることに
ここがいつ立ち去ってもいい場所のように思えることがある