2006年08月01日21時42分 「
戦艦武蔵」「天狗(てんぐ)争乱」など、綿密な取材に基づいた作品で親しまれた作家で日本芸術院会員の吉村昭(よしむら・あきら)さんが7月31日、膵臓(すいぞう)がんのため死去した。79歳だった。葬儀は親族のみで行い、後日「お別れの会」を開く予定。喪主は長男司(つかさ)さん。妻は作家の津村節子さん。連絡先は東京都新宿区矢来町71の新潮社出版部。
関係者によると、2月に舌と膵臓のがんの手術を受け、春に退院。散歩をするほど回復し、小説も書いていた。先月、容体が悪化、兄の死を題材にした短編小説「死顔(しにがお)」が遺稿になったという。
東京生まれ。旧制学習院高等科入学後に結核を患い、5年近い闘病中に文学を志した。学習院大在学中に同人誌「赤絵」で文学活動を始め、同大中退後、同人仲間の津村さんと結婚。「鉄橋」などで4度、芥川賞候補になった。
66年、若者の集団自殺を描いた「星への旅」で太宰治賞を受賞。同年、建造から沈没までを追った「
戦艦武蔵」を発表、感情におぼれず冷静に事実を見つめ、戦記文学の新機軸を開いた作品として高い評価を受けた。
その後も徹底して証言を集め、現地を踏んで「
高熱隧道(ずいどう)」「神々の沈黙」「
戦艦武蔵」などの力作を次々と執筆。「
関東大震災」を発表した73年、一連の記録文学により菊池寛賞を受賞した。
同様の手法を歴史に生かし、「ふぉん・しいほるとの娘」「
長英逃亡」などの歴史小説にも取り組んだ。本紙に連載した「天狗争乱」で94年大佛次郎賞。さらに04年10月から05年8月まで、輪王寺宮の運命を追った「彰義隊」を連載した。
実在の伝説的脱獄犯を描く「
破獄」(83年)で読売文学賞と芸術選奨文部大臣賞。すぐれた短編も多く、97年には「闇にひらめく」が今村昌平監督の映画「うなぎ」の原作となり、カンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を受けた。
お酒を飲む以外はほぼ仕事一筋の生活。連載開始時には全部を書き上げ、原稿を金庫にしまっているという律義な性格で、取材時に刑事に間違われたというエピソードもあった。
cf.
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