崩るる潮の渦卷きて 水路遙けき太平洋
西に浮かべる列島は 東亞の地をば守らむと
二千餘歳の勳しを 載せて麗はし花彩國
海の城てふ艨艟も 守るに長し我がほとり
ただ固めたる要塞に 健兒睨んで立てるあり
鯨頭われに何かある 鯨尾いかでか振はんや
桃源の夢さめし時 殊勝や長の武夫が
迷へる民を警めて 砲の響に外つ國の *つつ
聯合艦隊撃破しぬ 由來わが眼に敵もなし
また君見ずや麑城下 英船の膽ひしぎ取り
錨奪ひしことあるを 子平の身にはあらねども
民は得知らぬ海防と わが帝國の保全をば
そは改新の一徑路 今や精しき砲もあり *はう
國の礎打ち据ゑて 堅き塞の十餘カ所
偶偶時は移り來て 遠征もせし攻城隊
攻城砲の猛き威に 骸となりし旅順口
日の旗立てて 固めなん
難攻不落の砦をば 虎狼かくして默すべく
渤海の權 われにあり
遼陽の野に奉天に 敵の防備を仇にして
歩兵導く重砲の 殘る煙の底に湧く
どよめきの聲勇むなり 先進の士の功高し
さればや我は今ここに 呼ばば答へん富津の嵜
觀音嵜や横須賀や ゆるく流るる春の水
昔の夢を浮かべつつ われは此處にぞ老ゆるなり
宮島の影清きとき 紀伊の遠山青きころ
訪へよ我が友この島に 行くや白帆を數えつつ
夕日の綾に包まれて 畫中の身をば忘れなん
神武東征その折りの 道やここなる藝豫海
赤間箇關の海峽も 思ひは過ぎて對馬沖
韓山の雲低く垂る 神功の昔今にして
秋は來にけり澎湖島 福州の波通はせて
わが武を伸べん日を計り 冬は津輕の海青く
浪とこしへに動く上 雪白遠し蝦夷の土地 *せつぱく
別れし君と文やりて 砦守りの將軍と
果てしもあらぬ 大海を *わたつみ
朝な夕なに眺めつつ 聖りの國に捧げたる
わが運命をば悟る哉
cf. https://www.youtube.com/watch?v=ECRuLpVM1Hk