人絢爛の美にただれ 世は混沌の夢を追ふ
百歳(ももせ)の計を慮ふ兒等
來りて結べ雄津ケ原
見やれば北に翠巒の 山背は高く軟弱の
都の塵をさへぎりて 聖境ここに彌高し
遙かに指せば南溟の 巨浪の送る覇氣を容れ
爲すある秋(とき)を偲びつつ 三歳の雌伏なさんかな
想は馳する南歐の 燈ともし頃の雲の色
チューリンゲンの病葉よ ユングフラウの影淡し
夕陽(せきやう)沈む鏡畔(きやうはん)の 神祕にふるふ黄昏よ
二十歳の胸に迫り來る 詩聖の域を我ぞ知る
自由の寮に育まれて 時世(ときよ)の道に從へど
感激の無き人生を 空虚(うつろ)と拒め若人よ
去就の岐路に踏み迷ふ 人幾億の導きに
我等はなさむ人の世の 理想の偉業建設を
理想の偉業建設を
大正十三年寮歌