一つとせ 人の上には人はなき 權利にかはりがないからは この人ぢやもの
二つとせ 二つとはない我が命 捨てても自由のためならば この惜しみやせぬ
三つとせ 民權自由の世の中に まだ目のさめない人がある このあわれさよ
四つとせ 世の開けゆく其早やさ 親が子供に教へられ この氣をつけよ
五つとせ 五つに分かれし五大州 中にも亞細亞は半開化 このはづかしさ
六つとせ 昔し思へばあめりかの 獨立なしたるむしろ旗 このいさましや
七つとせ なにゆゑおまへがかしこくて 私らなんぞは馬鹿であろ このわかりやせぬ
八つとせ 刄で人をころすより 政治で殺すが憎らしい この罪ぢやぞえ
九つとせ こゝらでもう目をさまさねば 朝寢は其身の爲でない この起きさんせ
十つとせ 虎の威をかる狐等は しつぽの見えるを知らないか この畜生め
十一とせ 犬も喰はない内喧嘩 やるから今日びが安所帶 この悲しさよ
十二とせ 西へ東へ晝と夜 文明野蠻の分ちこそ この口惜しや
十三とせ 榮え行く世のその本は 民の自由にあるぞいな この知らないか
十四とせ 四民一つのその中に とぼけ華族のかへり咲き この珍らしや
十五とせ 五尺からだに五十年 道理を踏むより外にない この怖れやせぬ
十六とせ 牢屋の中の憂さ艱苦 惚れた自由の爲なれば このいとやせん
十七とせ 質にも置かないわが權利 うけ出す道理があるのもか このしれた事
十八とせ 鼻の高いに羽根がはえ 鞍馬山でなにをする この人知らず
十九とせ 愚痴やこゞとをこぼすのも みんな自由の爲ぢやぞえ この許さんせ
二十とせ 日本 亞細亞の燈明臺 消えて東洋が闇となる この照らしやんせ