人はなべてかなし
さ夜ふけし夜のみち
米何升を買ひてかへるもの
あにわが母のみならんや
われはけふ
しほ鮭のひときれを
買ひてかへるまづしき人を見たり
頭あをざめて
この世にいまは爲すことなきが如けれど
背には子を負へり
何も知らざるをさな兒よ
汝が母の背はあたたかくして
汝が母がくるるものはうまきかな
ねむれ、いとし兒
みちたりて
ねむれいとし兒
なが幼兒なる日
母は世にも貧しきくらしをなしつつ
なをそだてあぐるなり
すべて人は勞苦す
すべてのものはみなかなし
されど子を守る母はありて
おのれひときれの鹽鮭を
紙につゝみて買へども
なほ世のどん底に
死なせずしてとらふる力あり
なほ世のためになさしむるなり
いとほしめ汝が兒を
おのがじし
わが兒を負へる
ちまたの母は涙ぐましきかな。
ー「見なれざる人」よりー
横浜のゆきかえり,創元文庫日本詩人全集(五)を読む。
昭和二十八年,読書カードの切手は五円,定価百二十円。
高橋宗近の解説がスルドイ。頭は顏の誤植かもしれない。