
妻をめとらば才たけて 顏うるはしく情ある
友を選ばば書を讀みて 六分の侠氣四分の熱
戀のいのちをたづぬれば 名を惜むかなをとこゆゑ
友のなさけをたづぬれば 義のあるところ火をも踏む
くめやうま酒うたひめに をとめの知らぬ意氣地あり
簿記の筆とるわかものに まことのをのこ 君を見る
あゝわれコレッヂの奇才なく バイロンハイネの熱なきも
石をいだきて野にうたふ 芭蕉のさびをよろこばず
人やわらはん業平が 小野の山ざと雪を分け
夢かと泣きて齒がみせし むかしを慕ふむらごころ
見よ西北にバルカンの それにも似たる國のさま
あやふからずや雲裂けて 天火ひとたび降らん時
つまこをわすれ家をすて 義のため恥をしのぶとや
遠くのがれて腕を摩す ガリバルヂイや今いかん
玉をかざれる大官は みな北道の訛音あり
慷慨よく飮む三南の 健兒は散じて影もなし
四度玄海の浪を越え 韓のみやこに來てみれば
秋の日かなし王城や 昔にかはる雲の色
あゝわれ如何にふところの 劍は鳴をしのぶとも
咽ぶ涙を手にうけて かなしき歌の無からんや
わが歌ごゑの高ければ 酒に狂ふと人は云へ
われに過ぎたる希望をば 君ならではた誰か知る
あやまらずやは眞ごころを 君が詩いたくあらはなる
むねんなるかな燃ゆる血の 價少なきすゑの世や
おのづからなる天地を 戀るなさけは洩らすとも
人を罵り世をいかる はげしき歌を祕めよかし
口をひらけば嫉みあり 筆を握れば譏りあり
友を諫めに泣かせても 猶ゆくべきや絞首臺
おなじ憂の世にすめば 千里のそらも一つ家
おのが袂と云ふなかれ やがて二人のなみだぞや
はるばる寄せしますらをの うれしき文を袖にして
けふ北漢の山のうへ 駒たてて見る日の出づる方